このページでは、社会的証明という心理学効果についてわかりやすく解説します。
社会的証明とは?
社会的証明とは、簡単に言うと、みんながやってるからという理由で判断してしまうことです。
人は行動するとき、他人を意識しながら行動する傾向があります。特に、状況が不明確で自分で判断できないような場合には、強く働きます。
社会的証明は、アメリカの社会的心理学者ロバート・B・チャルディーニによって提唱されました。チャルディーニ は、社会的証明以外にも返報性の原理や一貫性、希少性なども提唱しています。これらをまとめて、チャルディーニの法則と言います。
影響力の武器という本を出しています。この本は心理学書では、おそらくNo.1なのではないでしょうか。
社会的証明の簡単な例
サトリク
社会的証明の例はたくさんあります。
特段美味しさに差がない2つのラーメン店が隣り合ってる時、行列ができている方を選んでしまう。
人間は多数派が正しいと思ってしまいます。
流行りのバンズのスニーカーを買ってしまう。
流行りはまさに社会的証明が働いている証拠ですね。
サトリク
このようなことが社会的証明です。人は、知らない間に周りにかなり影響を受けています。
社会的証明の面白い実験
心理学者スタンレー・ミニグラムの実験
ニューヨークの人が大勢通るところで実験は行われました。
実験の内容
1人の研究助手が60秒間、空を眺め続けました。
ほとんどの通行人は、その人が何を見ているかを気に留めず、避けて通っていきます。
次に、助手を4人に増やして60秒間、空を眺めました。
結果
空を見上げる通行人の数が4倍にもなったのです。
サトリク
確かに、4人も見上げてたら気になりますよね。多数の影響力は凄まじいですね。
心理学者ソロモン・アッシュの実験
被験者5人を集め、ちょっとした問題を出しました。しかし、5人中4人は仕掛け人になってもらい、答えと真逆の選択をしてほしいとお願いしました。
問題は、「ここに何本かのヒモがあります。この中で一番長い紐を選んでください。」という簡単な問題でした。
4人は一番短いヒモを選択しています。すると、もう1人の被験者が4人と同じく短いヒモを選んでしまうのです。
この実験を人を変え、繰り返しました。その結果、30%もの人が4人と同じ答えを選んでしまうことがわかりました。
サトリク
自分の考えよりも、多数人数が支持している考えを正しいと思ってしまうということですね。
社会的証明が人を動す
たった一言を変えただけで売り上げが劇的に上がる方法
アメリカの放送作家として数々の成功を納めてきたコリーンスショットという女性が、ある時、テレビショッピングの台本を渡されました。その台本の一部を少し変えました。
その結果売り上げが劇的に伸びました。
変えた箇所は、定番のセリフでした。
このセリフの修正だけで売り上げが劇的に上がったのです。なぜでしょう。
「オペレーターがお待ちしています。今すぐお電話ください」というセリフを聞いた視聴者のイメージ
とても退屈そうに待っているオペレーターが想像できます。商品が売れている気配はありません。
「オペレータに繋がらない場合は、恐れ入りますが、繰り返しお電話ください」というセリフを聞いた視聴者のイメージ
電話が殺到してとても忙しいオペレーターが想像できます。たくさんの人が電話をし商品を購入している様子が感じられます。
これはまさに社会的証明が働いています。たくさんの人が買っているんだから、自分も買わなきゃと思ったことでしょう。たった一言で、こんなにも人を動かすことができるのです。
社会的証明がネガティブに働いてしまった例
サトリク
アリゾナ州にある化石の森国立公園を知っていますか?
この写真のように、綺麗な化石がたくさん散らばっている世界遺産ですが、大きな問題を抱えています。
訪問者が化石を記念に持ち帰ってしまうのです。たくさんの人が持ち帰ってしまうため、どんどん化石が減っていきます。
そこで、公園の存続が危ぶまれていることを知らせる派手な看板を設置しました。
そこには「貴重な遺産が毎日破壊されています。一人ひとりがとっていく化石はわずかでも、それは一年間で十四トンにもなるのです。」と書かれていました。
しかし、この看板は全く効果はありませんでした。
これには理由がありました。この看板は、化石を持ち運ぶことがどれだけ悪いかということよりも、どれだけ頻繁に持ち運ばれるかということを訴えている看板でした。
そのため、この看板を見た人は、みんなが持ち帰ってるんだから、自分もいいだろうと、社会的証明がネガティブに働いてしまったのです。
この看板はすぐ廃止されました。
効果のある看板を探る実験
実験内容
もっと効果的なメッセージを書いた看板を作れないかを探るために、化石が盗まれるのを防ぐための看板を2つ作成しました。
1つ目は、「これまでに公園を訪れた多くの人が化石を持ち出したため、化石の森の環境が変わってしまいました。」という看板
これはネガティブな社会的証明が入っている文章です。
2つ目は、「公園から化石を持ち出すことをやめてください。化石の森の環境を守るためです。」という文章にしました。
その下に、1人の訪問者が化石を取ろうとしている写真を添え、さらに人物の手の部分に 禁止マークを描きました。
サトリク
この実験結果は、国立公園の管理者が化石になってしまうくらいショッキングだったらしいです。
実験結果
1つ目の看板は、どちらの看板も立てなかった時と比較して、なんと約3倍も盗まれた数が多かったのです。
この看板は、盗まれ防止どころか、盗むことを勧めています。
2つ目の看板は、どちらの看板を立てなかった時と比較して、盗まれる人は少し減りました。
このように、社会的証明は、商売ではうまく働きますが、ネガティブな方向に働く場合もあります。ネガティブな社会的証明には注意しなければなりません。
もし、社会的証明を使って看板を作成するのならば
「公園では年に十四トンの化石が持ち出されていますが、ルールを守り自然環境の保護に努めた大多数の人たちと比べれば、盗んだ人の数は少数です。」
という看板を作成するのがいいでしょう。
ネガティブな社会的証明は身近なところにもある。
コンビニなどのトイレで、「トイレを汚す人がいます。トイレは綺麗に使いましょう。」という張り紙を見たことがあります。
これでは、おそらく防止効果はないでしょう。逆に先ほどの化石の例と同じく、汚く使う人が増えてしまうかもしれません。
もし、張り紙を貼るならば「いつもトイレを綺麗に使っていただきありがとうございます。」というような文章にしましょう。
まとめ
- 社会的証明とは、周りの判断に影響されること
- アメリカの社会的心理学者ロバート・B・チャルディーニによって提唱された
- 行列が多い方を選んでしまう、流行りに乗ってしまうのは、社会的証明が働いている証拠
- 相手に、たくさんの人が支持していることをイメージさせるだけでも社会的証明が働く
- 社会的証明はネガティブな方向にも働いてしまう
このように、社会的証明を意識して少し文章を変えるだけで、人を動かすことができます。
何か、キャッチコピーを考える際は、社会的証明を使ったらいいのではないか。ネガティブな社会的証明を使っていないかをチェックするようにしましょう。
このような心理実験が好きな人へ
サトリク
僕はこのような心理実験が大好きです。
このページでは、たくさんの心理実験を紹介しました。このような情報は全て本で得ています。ネットでも得ることはできるのですが、誤った情報が掲載されている可能性が高いです。
本は出版する前にたくさんの人がチェックしているので、誤った情報が掲載されにくいです。その点では本は本当に価値の高い情報といえます。
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